「半沢直樹 アルルカンと道化師」6年ぶりの新刊!ネタバレありでレビュー!!

買収工作の裏側に隠された真実を暴く

この記事では池井戸潤著「半沢直樹 アルルカンと道化師」について感想を書きます。

半沢直樹シリーズの6年ぶりとなる新刊です。

とうとう出ましたね!

この記事では、そのアルルカンと道化師について、その魅力をネタバレなしとネタバレありで書いていきます。

 

 

「半沢直樹 アルルカンと道化師」とは

「半沢直樹 アルルカンと道化師」は半沢直樹シリーズの第5作目で、2020年9月17日に発行されました。

現在ドラマの最終回直前で盛り上がっていますが、小説も負けないくらいおもしろかったです。

本作は、時系列的にはシリーズ第1作「オレたちバブル入行組」の前日譚にあたります。

半沢が東京中央銀行大阪西支店に赴任して間もない頃に起こった買収案件についての物語です。

 

あらすじ

大阪西支店の融資課長として異動して1ヶ月たったある日、半沢は取引先の美術出版社・仙波工藝社の買収案件の交渉への同行を命じられる。

大阪営業本部の伴野は、業績低迷中の仙波工藝社の足元をみて脅迫じみたやり口で買収話を切り出すが、その失礼な申し出に社長の仙波は買収話を拒否する。

同期の渡真利から、仙波工藝社の買収を考えているのは大手IT企業ジャッカルと聞かされる。

美術出版社とIT企業という関連性がみえない買収案件に疑問を感じながらも、半沢は業績低迷中の仙波工藝社を救済すべく、融資担当の中西、南田らと行動する。

やがて、半沢はその背後にひそむ今回の買収話の秘密に気づく。

 

 

「半沢直樹 アルルカンと道化師」ネタバレなし感想

今作「アルルカンと道化師」は、2004年に刊行されたシリーズ第一作「オレたちバブル入行組」の前日譚となる話です。

半沢直樹と言えば、現在7年ぶりのドラマ化で話題になっています。

ドラマでは、半沢直樹シリーズの第3作「ロスジェネの逆襲」、第4作「銀翼のイカロス」が題材となっています。

なぜ、第5シリーズの今作「アルルカンと道化師」は、4作以降ではなく、第1作の前の話を描いたのでしょうか?

池井戸潤さんによると、「本来の半沢直樹像に戻したかった」と言われています。

銀翼のイカロスでは、半沢直樹は本店第二営業部の次長になっています。

戦う敵も政府とあまりに巨大です。

このまま続編を書いていくと、さらに巨大な敵、そして話が大きくなりすぎることを池井戸潤さんは気にしたのだと思います。

そして、今作では第1作の前日譚を描くことで、等身大の銀行員である半沢直樹がしっかりと描かれています。

僕としては、現在のドラマのように巨大な敵と戦う半沢もいいのですが、今作のように敵は巨大ではなくても、銀行員として帆走する半沢も好きですね。

現在のドラマでは、もう銀行員の枠を超えているというか、やり過ぎ感も僕は少し感じていたので、今作は本当に第1作を読んだ時の等身大の銀行員・半沢直樹を見ることができて、とてもよかったです。

そして、今作では芸術出版社とIT企業の買収劇を中心として展開していきますが、その周辺の人物、裏に隠された謎が徐々に明らかとなっていく様がまるでミステリー小説を読んでいるかのようで惹きこまれていきました。

本の帯にも書かれている通り、まさに探偵半沢が活躍します。

  • なぜIT企業ジャッカルは、芸術出版社仙波工藝社を買収しようとしているのか?
  • 業績低迷の仙波工藝社を救う半沢の一手はなにか?
  • 買収推進派の大阪営業本部と否定派の半沢との結末はどうなるのか?

物語を進めていくと、どんどんと真相が明らかになっていきます。

そして、物語のキーとなる人物として、仁科という画家がでてきます。

実は今回の買収の裏には仁科の書いたある絵画が影響を与えています。

半沢が仁科の書いた絵画に隠された謎を追っていき、その謎が明らかにされたとき、タイトルに込められた「アルルカンと道化師」の意味が理解できて、僕はちょっと心に響きました。

もちろん、最後には半沢の倍返しが待っています。

まさかの逆転の一手で、ジャッカル、仙波工藝社、周りの企業を動かしていきます。

ここはかなりスカッとする場面で気持ち良かったです。

中小企業を相手にすることで、その背景でもある人生や感情がよりリアルに表現されていると感じました。

まさに半沢直樹の原点回帰ともいえる本作、ぜひ気になって方は読んでみてください。

 

 

 

「半沢直樹 アルルカンと道化師」ネタバレあり感想

それではここからはネタバレありで感想を書いていきます。

僕は今作、倍返しのスカッとした気持ちもありましたが、画家仁科を中心とし明らかになっていったその人生に感情移入させられました。

読まれたみなさんはどう感じましたでしょうか?

買収を進めたいジャッカルの真の狙いは、仙波工藝社に隠されたある絵画でした。

ジャッカルの社長である田沼は絵画のコレクターで、仁科の作品も圧倒的にコレクションしていて、来春には仁科作品を目玉とした美術館を開く予定だった。

そして、仙波工藝社の融資の承認の条件として、担保を求められた半沢は、担保を探す中で、仙波工藝社に隠されたある事実に気づきます。

昔、仁科は現仙波工藝社のビルで働いており、そして仙波工藝社の建物に仁科の代表作であるアルルカンとピエロの絵が隠されていたのです。

しかし、そのアルルカンとピエロの絵画に書かれていたサインは仁科ではなく、佐伯と書かれていました。

半沢は佐伯を追っていくうちに、佐伯もまた以前画家を目指していた青年で仁科とともに働いていた事実にたどりつきます。

そして、アルルカンとピエロは、佐伯のオリジナル作品であり、仁科は佐伯のアルルカンとピエロをコピーしたことがわかります。

この事実が公になれば、仁科の評価は地に落ちて、田沼の保有する仁科のコレクションの価値の急落、そして仁科作品を目玉とした美術館の失敗になってしまう。

ジャッカルが仙波工藝社を買収する理由は、ビルに隠された佐伯のサイン入りのアルルカンとピエロを隠蔽することでした。

そして、半沢は担保を探し出し、仙波工藝社の融資は決まり、助かります。

もちろん、仙波工藝社は買収を断ります。

買収を進めていた業務統括部長は、頭取をはじめ全店舗の支店長らが一同に会す全店会議で半沢に買収失敗の責任を追及します。

ここで半沢からの逆転の一手がでます。

田沼の美術館を大阪西支店の取引先である企業が購入

そして、新たな美術館の目玉としては、仁科と佐伯の二人の展示、そして二人のエピソードは仙波工藝社の芸術誌で特集が組まれることとなった。

仁科は佐伯のアイデアを奪って日の目を浴びるようになったことをずっと後悔していて命を絶ったのですが、ようやくその辛さから解放されることになりました。

文中で、仁科と佐伯の手紙のやり取りのシーンがありますが、仁科の苦しさと佐伯の心から仁科の成功を喜ぶ気持ちが伝わってきました。

そして最後の仁科の遺書に書かれた

「アルルカンになれなかった男の最後の願い」

「本当に脚光を浴びるべきは佐伯」

「いつの日か僕ら二人の人生を世の中に知ってもらいたい」

半沢の一手により、ようやく二人は救われたのですが、今作はスカッと逆転するだけではない、二人の画家の人生などが深く書かれており、かなりの読み応えがありました。

 

 

まとめ

今日は池井戸潤著「半沢直樹 アルルカンと道化師」を紹介しました。

半沢直樹のエピソード0ともいえる内容に読んでいて惹きこまれました。

著者の池井戸潤さんは小説を書く際に、映像化などは考えず、好きなように書くことを意識しているようです。

僕はこの小説を読んで思ったことは、「あっこれは映画化があるな」ってことでした。

仁科と佐伯のやりとりは心が熱くなりましたし、最後の半沢が全店会議で倍返しをするシーンはぜひスクリーンでみたいと思いました。

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