特殊能力を使った連続自殺事件の謎を解け
この記事では浅倉秋成著「教室が、ひとりになるまで」について感想を書きます。
本屋に入った時に、すぐ正面の棚に置いてあった本作。
表紙に書かれていた文言に惹かれておもわず買ってしまいました。
「さようなら、二度と会いたくない友達たち」
「最高のクラスで起きた最悪の事件」
「彼らは何故、自殺をしたのか」
本作は青春本格ミステリとなっていますが、実はそこに能力バトルを組み込むことで、謎解き要素がかなり面白くなっている作品です。
その魅力をまとめていきますので、チェックしてみてください。
「教室が、ひとりになるまで」とは
「教室が、ひとりになるまで」は浅倉秋成の小説で、2019年3月1日にKADOKAWAより発行されました。
本作は第20回本格ミステリ大賞や第73回日本推理作家協会賞にWノミネートをした作品です。
ある学校で起こった3件の連続自殺の謎に迫っていく話ですが、自殺の裏に隠されたクラス内の生徒の様々な感情や、その犯人に迫るまでの謎解きがとても楽しめる作品です。
さらに、この連続自殺がこの学校で代々引き継がれてきた特殊能力を使える能力者による連続殺人事件に姿を変えたとき、主人公自身が特殊能力を使って犯人を捜していくのですが、そこに能力を暴こうとするが自分の犯人から能力で殺されてしまうかもしれないという緊張感もあり、ドキドキが止まりませんでした。
あらすじ
私立北楓高校で起こった生徒の連続自殺。
最初の1人目はトイレで首を吊り、2人目と3人目は校舎から飛び降りて亡くなった。
3人とも「私は教室で大きな声を出しすぎました。調律される必要があります。」という同じ文面の遺書を残して。
主人公の垣内友弘は、同級生の自殺によるショックで登校できなくなったマンションの隣に住む白瀬美月の様子を見に行くことになった。
そこで、主人公は驚きの言葉を聞く。
「3人とも自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの。私も命を狙われている。」
自殺を疑っていなかった主人公だが、その後主人公に届いた手紙により、白瀬美月の言葉を信じ、連続自殺の謎に挑むことに。
連続自殺はなぜ起きたのか?
連続自殺の犯人は誰なのか?そしてその目的は?
主人公は白瀬美月を守ることができるのか?
このような方におすすめ
この小説は、連続自殺の謎を追うという学園ものの青春ミステリーですが、そこに特殊能力という要素が入ってきます。
ミステリーに別のものを掛け合わせることによって、面白さが倍増するのは以前にも記事を書いた「屍人荘の殺人」や「魔眼の匣の殺人」に近いものを感じました。
僕は「教室が、ひとりになるまで」は
- 能力バトルが好き
- 謎解きが好き
な方にオススメの小説です。
「教室が、ひとりになるまで」はここが面白い
特殊能力という設定
主人公が連続自殺の謎に迫るきっかけは、ある手紙が届いたことでした。
その手紙には、
- 学園には4人の特殊能力をもつ生徒がいる
- 生徒は卒業時に次の生徒を選び、自分の特殊能力を引き継ぐ
- 特殊能力は、能力の他に発動するための条件がある
- 他人に能力と発動条件を知られると、能力は失われる
- 特殊能力は学園内でのみ使える
と書かれていました。
そして、主人公が与えられた特殊能力は
「人の嘘がわかる」
でした。
発動条件は、「体に痛みを与える」です。
ここから主人公はこの嘘を見破る能力を使って、連続自殺の犯人を捜し始めます。
犯人は他の能力者の3人のうちの誰かです。
しかし、他の能力者がどのような能力を持っているかはわかりません。
「あなたは能力者ですか?」なんて質問をすれば、嘘がわかる主人公ならすぐに能力者かどうかは見破ることが出来ます。
しかし、相手の能力もわからないため、逆に相手の能力により主人公が操られて自殺させられるかもしれません。
この主人公が相手の能力によって逆に殺されてしまう緊張感を持ちながら、犯人を捜す展開はかなりドキドキしました。
まるで謎解きのような爽快感
物語の半ばほどで、主人公は連続自殺を起こした能力者を見つけます。
そして能力者は主人公で目の前で4人目の自殺を起こします。
主人公は防ごうとしましたが、自殺を止めることはできませんでした。
さらに、能力者から主人公は、「夏休み明けの9月にはあなたは学校にはこない。なぜなら、あなたは自殺したくなってしまうから。」と言われます。
他の自殺した同級生も自殺としか思えない状況で殺されています。
能力を使って殺したのは明らかですが、その能力がなにかわかりません。
ここから、それぞれの自殺現場の状況から犯人の持つ能力が何かを探ります。
最初は「自殺したくなるような精神誘導するような能力」と考えていましたが、状況などからそれはあり得ません。
主人公が自分の身を守るためには、犯人の能力と発動条件を見つけて、犯人の能力を無くすしかありません。
このあたりはまるで謎解きのようになっていて、自殺の状況から能力を推測するところが楽しめました。
そして、犯人の能力についてある仮説をたてて、最後のバトルに向かいます。
この時点では他の能力者も現れていて、4人で戦うことになります。
犯人が能力を使い、主人公を殺そうとするのに対し、主人公が見破って能力を奪うことができるのか、という展開はスピード感もありワクワクして読みました。
犯人の能力が明かされて、連続自殺の真相が明らかになったとき、まるで謎解きを解いたかのようなスッキリ感も味わえます。
まとめ
今日は浅倉秋成著「教室が、ひとりになるまで」を紹介しました。
能力バトルと聞くと、ワンピースやジョジョのような展開を想像するかもしれませんが、本作はロジック的に考える謎解き「デスノート」のようなバトルを楽しめます。
そして、最後に主人公がとった行動にジーンと感じるものもありましたし、事件が全て解決したあとが描かれたこの小説の最後の章「悲劇の誕生」を読んでほしいです。
この章で主人公の周りにいた心の拠り所としていたものが一つ一つ消えていく。
感情移入してきた主人公が表題の通り、ひとりになっていく瞬間。
そんな主人公が最後に能力を使って手を差し伸べてくれる存在を確かめるところは僕の心に響きました。
最後の展開まで味わってほしい小説です。